夜歩く

仕事を終えて巣鴨で会社の先輩らと飲む。今回は余裕で帰れると思ってたら5分差で終電を逃した。仕方ないので秋葉経由で総武線。金さえあれば秋葉で豪遊して朝までいるのに。悔しー。


本八幡に降りた。タクシー乗り場に人がいっぱいいてうざったかったので歩いて帰ることにした。幸い、明日は休みだ。
コンビニで1㍑スポーツ飲料を買い、歩きだす。こっからならまぁゆっくり歩いて1時間ちょい。


江戸川河川敷を歩く。ちょうど草が刈られていた土手を歩く。モフモフした感触が心地よい。こうやって見ると夜の江戸川ってのは良いもんだ。昼見るとどうしても汚い川の水を強く感じてしまうけど・・・。
空にはちょうどいい感じに月が出ている。川原の草の上を月を見上げ、ドリンク飲みながら歩く。なんてゆったりして気持ちのいい時間だろう。


途中、誰かが自分の前を歩いてて「おお、あの人歩くの速いな〜。追いつけないや。」と思ってたらふと人影が消えた。・・・なんてこたない。アレは自分の影だった。正直、幽霊か妖怪にでもあったかとドキドキした。だが、まぁ、世間一般の怖い話ってのは大半こんなもんだろうなと思うと、なんだか可笑しくなった。時間はちょうど丑三つ時なれど、残念ながらそこには自分以外に人っぽい者はいない。また月を見上げならが歩き出した。


こうやって家まで歩いて帰るのは久しぶり。ここらには5年住んだけど、今日も入れてせいぜい3回目くらいだ。そして、来月から俺はココからいなくなるのかと思うと少し寂しくなった。
そのせいもあり、普段見慣れている街を良く見ながらゆっくりと歩いた。古い家と新しい家が建ち並び、細い路地が多くて雑然とした街並み、そこにぽつぽつある神社やお寺。そこに生える立派な木々。大きな通りをちょっと入ると見えてくるこの街の懐かしい姿は好きだ。


眠った街の中を1人歩くと、なんとなく自分が生きている事を強く感じられる。
俺は人がいっぱいいる場所が大嫌い。その温度や湿度が少々気持ち悪い。眠った街にはそれが無い。死んでいるようで、かすかに生きている。そんな街の温度や湿度が丁度いい。
もしかしたら自分はこの夜の中、誰にも気付かれないまま静かに消えてしまうかもしれない。そんな怖さと憧れが混じった思いを半分怖がりつつ、半分は面白がりつつ歩く。
「実際はこのまま消えるには気がかりと言うか、始末しておかないとやばいものがたくさんある。だからまだ消えるわけにはいかん。」そう思うと、なんだか笑えてくる。そして、もっと明るい世界で生きようと言う気分が高まってくる。金を稼いで、技を磨いて、欲望を満たしてやろうって気分が高まってくる。眠った街はいろいろな事をゆっくりと考えさせてくれる・・・。


そんな感じで、帰宅。疲れたけど心地よい。明日からまた欲望を満たすために生きよう。そして新しい街で行きよう。そんなことを感じた帰宅道中だった。