電車にて

今日、ちびっと電車を止めた。
ダイヤの乱れに俺も幾分荷担してしもうたなぁー。

帰宅途中の電車でそれは起こった。
いつも降りてる駅のひとつ前。ラーメンが食いたいときなんかに降りるなじみの駅。
なんか横の方が騒がしいなと目をやると白髪のおじさんが倒れてた。俺はヘッドフォン着けてPDAで作曲ソフトと格闘中だった為に詳細は見てない。だが、どうもただ事じゃなさそうだ。
おじさんは凄い汗かいてよだれを大量に吐いてうめいてる。
近くの男性がおじさんを椅子に座らせるが、はっきりした返事が無く、意識があるのかどうかもわからない。社内騒然。そんな中、電車が出そうになると何処からとも無く「止めた方いいんじゃない?」の声が。そりゃそうだわな。緊急事態ですわなコレ。

とりあえず、入り口近くにいた人は外に出て駅員を探す。俺も人の少ない側で駅員探し。何人かが戸の周りで手や声をあげて駅員を探す・・・が見つからない。乗客が戸口で騒いでるので既に電車は何分か止まってるわけだが、こんなときナカナカ来ない駅員さん。何ゆえ何故に??

時間も経ってきたし、こら、真剣にやばそうである。これは改札まで行った方が早いなと言う考えが頭をよぎる。で、周りを見ると・・・ああ、実に嫌な空気だ。誰も走り出しそうには無い雰囲気だ。誰がどう動くべきなのかって思いと焦りが絡まりあってスタックしてしまった空気。
「ああー、もう!」
そんな気持ちで階段へ走りだした。たぶん自分が思ったよりかなりはかなり緩慢とした動きだろう。そんな俺にどこかのおばちゃんが「駅員さん呼んで来て!」と叫ぶ。元よりそのつもり。

帰宅時のごった返す人にぶつからないように階段を降りる。ヘッドフォンのケーブルが邪魔。
大声で「駅員さーん」とか叫べばいいのかもしれんが、やっぱりいざって時には声って出ない。さらに「いやいや、騒ぎを大きくするとやばいのでわ?」って考えで瞬時に自己弁護する始末。
いつも通ってる改札口。普段は自動改札に詰まったときしか使わないようなこの通り道で「すいません、電車の中で倒れた人います」なんて喋ることになるなんて思わなかった。

「電車は、もう行ってしまったのですか?」との問いに少し面食らう。いやいや、もう上で5分近く止まってるのですよ電車はー。なんとか二言三言伝えた後「急病人発生」の電話が上のホームへ飛ぶ。「今、人が行きますから」と聞いてすぐホームに取って返す。

「今、駅員さん呼んできましたよ。」何となくさっき俺に声をかけたおばちゃんに報告する。
「いやね、今駅員さん見えたんだけどあっちに行っちゃって・・・」おばさんは戸惑ったようにホームの端を指す。ほんとだ、コッチですてば。・・・そうか。ゴメン。俺、何両目とか言わなかったもんね(涙)

そんなこんなで、おじさんはこの駅にて駅員さんに車椅子で連れられていきました。うまく口が動かないようだが意識はあるようだ・・・。

そして電車が動き出した。
近くでは何人かが今のことについて話している。俺は入り口の近くで無言で絡み合ったヘッドフォンのコードを直してた。なんか、軽く話かけたい気分じゃなかった。率先して動いたわけじゃないし。
コードがキレイにほどけた頃、俺の降りる駅に着いた。
すぐさまヘッドフォンをつけて外に出た。一応、電車を降りるときさっきのおばちゃんに会釈したつもり。無言で軽くだから気付いてないかも。まぁ、どうでも良い。
なんかいづらかったから、立ちとまりも振り返りもせず早足でその場を離れた。急いでLAST TRIBEのUncrowned Queenを再生した。

俺の今日の行い、40点。
もっと応急処置の方法知ってるでしょ俺?もっと早く行動できたでしょ俺?

明日駅で今日のおじさんのこと聞くのはやめておこうと思った。「手遅れ」とか怖いから。